女子サッカーオランダ代表キャンプを振り返る
東京オリンピック閉幕からまもなく1週間。 まもなく始まるパラリンピックも基本的に無観客になりそうで、現在の感染拡大状況を考えると致し方ないことではあるが、スタジアムで選手たちの奮闘する姿を生で観戦できないというのは、やはりどことなく寂しい思いがする。
ちなみに、オリンピックのチケットはいくつか当選していたのだが、どれも無観客、あるいは学校観戦のみ可能(茨城県)となり、払い戻しが行われるらしいが、TOKYO2020のチケットサイトを確認したところ、私のチケットはまだ払い戻しのプロセスに入っていないようだった。 いつ払い戻されるんだろうか。
さて、7月7〜17日に鴨川市で事前キャンプを行った女子サッカーオランダ代表は、グループステージを2勝1分0敗、3試合でなんと21得点という爆発的な攻撃力を誇りながら、準々決勝では運悪く世界ランキング1位のアメリカと当たってしまい、2−2でPK戦までもつれ込む展開になったものの、敗退してしまった。
ちなみに優勝は鴨陸でオランダとトレーニングマッチを行ったカナダ。 今大会絶好調のスウェーデンとの決勝戦。カナダは粘りに粘って、1−1でPK戦。 GKが神がかり的なセーブを連発し、カナダに軍配があがった。 鴨川市とは少しでも御縁のあるチームだけに、素直に金メダルはうれしかった。 裏話で、実は6月頃、カナダの女子サッカーチームも鴨川市で受け入れませんか、という話しがあったのだが、その時はすでにオランダを受け入れ、とても、このコロナ禍で2カ国を受け入れられる状況ではなかったので、残念ながらお断りした経緯がある。 カナダチームは成田市にキャンプを張り、同じ県内同士、グループリーグも別ということで、オランダvsカナダの夢のような練習試合が鴨陸で実現したのである。
女子サッカーオランダ代表は結果こそ、今回はベスト8止まり(おそらく公式記録的にはPK戦は引き分け扱いになるので、全体5位だと思われる)に終わったわけだが、コロナ禍の特殊な状況下において、事前キャンプはほぼパーフェクトに実施できたと思う。 監督や選手たちのインタビューにおいても、鴨川市については総じてポジティブなコメントにあふれ、誘致の一つの売りとしたピッチについても「(自分の所属する)アーセナルのスタジアム以上のピッチ」「世界レベルのピッチ」という高い評価をいただき、施設係のグラウンドキーパーもとても誇らしげにしていたのが印象的だった。 鴨川市へのポジティブな情報はオランダ国営放送をはじめ、オランダの各種メディアで報じられており、広告費換算したら、かなりの額のPR効果があったのではないかと思われる。
思えば、私がまだオルカ鴨川FCのフロントを務めていた2016年からはじまった、女子サッカー海外代表チームの事前キャンプ誘致。もちろんこんな誘致活動なんてやったことがない、本当に左右もわからない状況でスタートし、暗中模索の中、当初はアメリカと並び、世界の女子サッカーをリードしてきたドイツに照準を置いていたが、ひょんなかたちでオランダと御縁が結ばれ、そして、今回の事前キャンプが実現したのである。 その道程は本当に紆余曲折、たいへんなものだし、誘致を始めた頃、否、つい2年前くらいまではオランダといった強豪国が本当に鴨川市を事前キャンプ地に選ぶのか、当の私も懐疑的であったのは正直なところだ。
オルカの立場で一度渡欧、その後、オランダを候補国に追加して、2度ほど渡欧し、オランダサッカー協会に突撃してプレゼンテーションも行った。 誘致成功は五分五分以下であろう、と思っていたが、その後、オランダは2019年女子W杯で見事に準優勝に輝き、ヨーロッパ勢トップの成績でヨーロッパで3枠しかない東京五輪の出場権を手にすることとなった。
コロナ禍で東京五輪は1年延期され、この1年、常に変わりゆく先行きの見えない状況下で、(あえて言わせていただくが)一言で言えば「だらしない」国と、国と全然連携もとれていない組織委員会、さらに千葉県とも喧々諤々の中、準備を進めてきた。 今回の五輪は、オーガナイズは全然ダメだった、有事下における日本の脆弱さを露呈したものとなったと断言するし、結局のところ、それをフォローした、尻拭いしたのは現場のスタッフやボランティア、受け入れ自治体、そして、選手団であったと言える。 個人的には、もう国には愛想が尽きた。がっかりだ。 それでも、現場、そして選手団のがんばりが五輪を価値あるものに留めてくれた。 本当に健気なことだ。
バブルに対する考え方も国と、海外から選手団との間には大きな乖離があったと思う。 これは過去の日記でも記した通りだが、そもそも、バブルとは、その中は基本的にクリーンであるという考え方の下、なるべくバブル内では日常生活、普段と変わらないトレーニングが行えるようにし、外からのウィルス持ち込みを極力防ぐためのものであるのにも関わらず、むしろ国が定めているガイドラインは、内部の生活を窮屈なものにし、それに携わる日本人スタッフ側は結構緩い規定になっていたりと真逆を行くものであったと思う。 世論を気にしてのことなのか、とにかく海外から来る選手団は危険で、日本人はなんだかんだ大丈夫みたいな考え方が跋扈していたように私は感じた。 だが、実際には逆で、海外から来る選手団の多くは、コロナ対策をしっかりと講じてきており、実際選手村や五輪会場でクラスターは発生していない。もちろん陽性者は出てはいるが、それは単発的なものに留まっている。逆に、バブル外では過去最悪の感染拡大が広がってしまった。 自分が海外の選手団と関わったから、ということもあるが、なんだか選手団が不憫に思えてならなかった。なので、現場判断で、感染対策もしっかり論理的に考えた上で、精一杯の「おもてなし」を考えて我々も対応した。
コロナ禍さえなければ、、、多くの人たちはそう思っているはずだ。
コロナ禍さえなければ、オランダの人たちを自転車に乗せ、鴨川の魅力あふれる里山や里海をサイクリングできただろうし、鴨川の子どもたちとももっともっと直接的に交流できた。選手たちもそれを望んでいたのは間違いない。 鴨川の良いところを1割も体験していただけなかった。それが一番の心残りである。
でも、それは次の目標にしよう。 これは終わりではない。新たなスタートでもある。 これからオランダとの関係をより深化させていきたいと考えているし、事前キャンプ実施の大きなレガシーである、女子サッカーにおけるオランダとのウィンドウに鴨川がなること、そして、サッカーだけでなくさまざまなチャンネルでの交流へと発展させていくこと。 言うなれば、鴨川市が現代の「出島」になりたい。
夢はまだまだ続いていく……。
[WALK:-]
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事前キャンプの現場で奮闘した全選手・スタッフ(鴨川含む)の集合写真 Canon EOS 6D Mark II 24.00 mm ISO400 1/160 sec f/14.0
家族みんなで行った祖霊祭 iPhone SE (2nd generation) 3.99 mm ISO320 1/33 sec f/1.8
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