第1バブル
事前キャンプにおいて、私をはじめ、3人のスタッフが「バブル」の中に入る。 我々はプロジェクトチーム内では「第1バブル」とも言われている。 なんだか、まるで戦場の最前線に赴くような言い方でもあるが。笑
コロナ禍におけるスポーツイベントをきっかけに生み出された「バブル方式」ということば。 要はチームや関係者が大会前後、期間中、他者とは隔離された空間を作り、そこで過ごすことで互いの感染を防ぐという目的であるが、ただ、完全な「バブル」を実現するのは簡単なことではない。 今回の五輪、「バブル方式」が採用されているのは知っているが、しかしながら、完全な「バブル」ではなく、「セミバブル」と言った方が良いだろう。
そもそも、海外から関係者も含め10万人近い人々が来日し、さらに、自治体や我々のような選手団に密接に関わる日本側のサポートスタッフも入れれば、20〜30万人くらいにはなるだろうか。 それだけの人が完全な「バブル」を形成するのは現実的ではない。
国から示されているマニュアルを見ればわかるように、海外から来日する選手・役員らにはかなり厳しい行動制限が課されることになる。 五輪目的で来日する彼らには入国直後から活動は認められるが、ただし、事前に届け出た宿泊施設やトレーニング施設などの用務先以外に出ることは許されず、したがって、一時、ソフトボール・オーストラリア代表の事前キャンプをすでに受入れている群馬県太田市で話題になった、街のお店に買い出しに行くなどの行為は一切許されない。 選手団は間違いなく、相当なストレスの中での五輪参加を強いられることになるだろう。
ただ、日本側のスタッフにはそこまで厳しい強制力のある行動制限は課されない。 家族と過ごすのもOKだし、特になにをしてはならない、との強制的なお達しはない。(もちろん守るべき行動制限はある。罰則はないけど) つまり、我々は我々のモラルの中で過ごすことが求められるわけだ。 まぁ、いかにも日本的というか。
先発隊がちょうど2週間後に入ってくる中、今日から私はバブルを意識した生活に入っていく。 会食はもちろん絶対しないし、家族との過ごし方も気をつけるつもりだ。 マスクは常時着用、これまで以上に手洗い・手指消毒に気をつける。 マニュアルにしたがい、特に我々「第1バブル」のスタッフは事前キャンプが始まる数日前から毎日のPCR検査(唾液検体式)が行われることになる。 ただし、仕事やスポーツ活動を制限されるものではないので、それは現実的な範囲内で、感染対策には十二分に留意しつつ過ごしていくことになる。
今回マニュアルをまとめたりする中で、感染症の権威である、亀田総合病院の細川医師もアドバイスしてくれたが、マスク着用や手指消毒、換気で、COVID-19の3つの感染ルート、飛沫感染、接触感染、エアロゾル感染をほぼ防ぐことができる。 逆に言えば、過剰なまでに恐れる必要もないということでもある。論理的に、しっかりとした感染対策を行っていれば、感染の可能性はほぼゼロである。 返って、見た目対策しているように見えても、それが疫学的には意味のない感染対策であれば、結局はリスクを背負ってしまうことになる。 そこらへんを考えながらの対策になるわけだが、冷静に考えると、やはり最も感染のリスクが大きいのは「会食」であると言わざるを得ない。
会食中はマスクを外す。どうしても唾も飛ぶ。ついつい、マスク無しでの会話になる。 つばの飛んだ食器で食事をする。接触感染にもつながる。 密室であれば、エアロゾル感染のリスクも起こる。 なるほど、会食は論理的にも確かにリスクがある。
そんなことを考えつつ、しっかりと自分の健康管理を行い、残りの準備を進めたい。
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