2020/05/31

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鴨川市が目指すべきまちづくり その3
with Corona/Virus 時代において、鴨川市が目指すべきまちづくりの考察、その3。
まずはその1・その2のおさらい。

1. 新型コロナウイルス禍で加速した時代の転換

(1) 時間・場所の概念が崩れた。
(2) 薄利多売から単位あたりの価値を高める時代
(3) 真の「地方分権」が進む。
(4) 都市から地方へ人が動く。
(5) グローバリズムの終焉
(6) 情報の重要性

↓↓↓ 時代の転換を前提として ↓↓↓

2.“新しい生活様式”を気軽に実現できる鴨川市

(1)“密”を防ぐ適正な人口
(2) 心身ともに人間的な生活を送れる豊かな自然環境
(3) 地域の自給自足が可能な農林水産業
(4) 安心を担保する充実した医療福祉
(5) 歴史・伝統などに根ざした地域のアイデンティティ
(6) 都市とのほど良い距離感
(7) ワーケーション・リモートワーク・二地域居住を実現できる情報インフラ

では、それらを踏まえて、鴨川市がどのような施策、まちづくりを目指すべきなのか、提言したい。

3. 鴨川市が目指すべきまちづくり・施策の提言

(1) どこよりも早く、勇気をもって手を挙げよ!

まずなによりも、鴨川市が新しい時代・価値観に対応した街を目指す!という力強く明確な意思表明をどこよりも早く、勇気をもって発信してほしい。

新型コロナウイルスの状況を見計らって、絶妙なタイミングを狙う必要はあるが、第1波を日本国民のモラルある行動によって乗り越えた我が国が、いま with Corona の時代に社会経済と両立したスタイルを目指そうという第2フェーズに入ってきている中で、実はもうタイミングは来ていると思う。

都市住民の地方への志向性も多いに高まっている現段階において、鴨川市がこうしたメッセージを発することにより、間違いなく人々の頭に「鴨川市」が自分の次のステージの場所としてインプットされるはずである。

いきなり二地域居住や、移住・定住という踏み込んだ行動にはならなくとも、その前段階として、そういった感度をもった人たちがまずは #StayHome でたまりにたまったストレス解消に訪れるのでも良し、あるいはワーケーションである一定期間仕事をしながら家族とのびのびと過ごすのでも良し。きっかけは作れるはずだ。

市長をはじめ、鴨川市の有力者、影響力のある人たち(インフルエンサー)、そして、鴨川市民自身がみんなで発信しようではないか。

鴨川市は新しい時代・価値観のライフスタイルをいち早く実現できる街であることを。

少なくとも、私はここに宣言する。

(2) 新たな滞在のカタチ

鴨川市の主産業の一つは観光業である。
県内でも随一の宿泊収容能力をもつ地域でもある。
しかしながら、昨年の台風被災、さらに今回の新型コロナウイルスによって、観光客は激減し、宿泊業、観光客を対象とした飲食業など、市内産業は壊滅的な打撃を受けている。

地域経済の基として頼りにしてきた交流人口が失われたのだ。

これは一見、観光都市の崩壊を意味するようにもとらえられるかもしれないが、実は違う。
みなもうここ数年、否、十数年来、薄々心の中では気づいていた、旧来の観光からの脱却をしなければならない状況についになったということである。
今回の新型コロナウイルスの感染拡大により、一度に一ヶ所に大勢の人を集めることの価値が真逆となった。要は旧来のメガイベント型、マスマーケティング型の観光は成り立たないのである。
団体旅行という文化すら、これからはあやしい社会になる。インバウンドなど、復活に果たしてどれぐらいの時間を要するだろうか。

いずれにしても観光の概念を変える必要がある。
逆に言えば、新しい観光にはとんでもないポテンシャルがあるのである。

奇しくも鴨川市が「ホリスティック・ツーリズム」を標榜してきたように(と言っても、そのことばすら、多くの市民は知らないところではあるが…苦笑)、いまこそ、広義にとらえた観光まちづくりが必要なのだ。
観光とは私なりに言えば、すなわち「まちづくり」そのものである。農林水産業、医療福祉、スポーツ・文化、さらには人々の日々の暮らしそのものが観光の要素となり得るのである。

ただ、ここで「観光」ということばを使うと、旧来の狭義の観光と誤解されかねないので、「滞在」ということばを使おうとしよう。

台風被災、新型コロナからの復活において、鴨川市には、いま新しい滞在のカタチを創造し、人々に提供する、そんな施策にチャレンジすることが求められている。

(3) 時間・場所の概念の崩れた、ワーケーションに活路あり

新しい滞在のカタチを創造する上で、私は政府もこれからますます力をいれると見られる「ワーケーション」「テレワーク」にヒントがあるように思う。

特に「ワーケーション」は鴨川市にピッタリのスタイルだ。
「ワーケーション」とは「ワーク」と「バケーション」組み合わせた造語であるが、その名の通り、「仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を柔軟に組み合わせた新しい過ごし方」である。

鴨川市に家族と一緒に滞在し、朝は海辺を散歩したり、サーフィンを楽しんだりしつつ、午前中、滞在先でテレワークし、昼は市内のレストランでランチ、午後はアクティビティに家族でチャレンジして家族サービス&健康づくり、夕飯は海鮮やバーベキューを楽しんだり……、というライフスタイルである。
もはや、時間も曜日も場所も関係ない。家族や大切な人と過ごす時間も大幅に増える。仕事を効率的に行い雇用先の求める成果を出せれば(個々の能力向上のきっかけにもなるかもしれない)OKなのだ。決まった働いたから評価される、とかそういうものではない。
通常のテレワークよりも、さらに自由度の増した就業形態である。

さらにワーケーションは数週間から長ければ月単位という長期滞在であることも特徴的だ。
その意味では二地域居住(デュアラー)の入口とも言えるだろう。

鴨川市はワーケーションの受け入れと、ワーケーションができる場所を用意すれば良い。

そこで活用できる1つの施設が、目下苦しんでいる宿泊施設である。もちろん宿泊施設のスタイルもさまざまであるから、全ての施設が対応できるわけではないだろうが、長期にわたって利用者が確保できるというのはビジネスとして大きな担保になるし、例えば、企業と契約し、希望する従業者のワーケーションのステイ先として年間を通じて提供するといった形態もあり得るだろう。

ワーケーションで提供するのは、本人や家族、大切な人たちが滞在できる空間、また、仕事ができる空間・情報インフラ(光ファイバー回線や無料WiFi)である。
仕事の空間については単独の部屋を用意することもなく、フリーアドレス(人によって決まったデスク・場所のない)なコワーキングスペースなり、ワーキングカフェで良いだろう。
仕事で滞在したとしても、さらにそこに飲食オーダーなどの副次的な消費も生まれる。そこで、鴨川市ならではの、地元の食材を活かした健康も考えたメニューを提供してはどうだろう。仕事をしながら健康づくりまでサポートされてしまうのだ。
まさに心身ともに健康的に、仕事も遂行できるという、いわば「ウェルネスシティ」が実現することになる。

仕事をする場所だけでなく、バケーションの要素も必要となるが、これは鴨川市にとってみれば、地域資源で勝負すれば良い。

鴨川シーワールドをはじめとする観光施設もあるし(実際、オルカ鴨川の選手たちもリフレッシュにシーワールドに行ったりしているらしく、短期滞在者だけでなく、長期滞在者にとっても実は一つのスポットである)、歴史ある神社仏閣も多く存在し、お参りがてら心のリフレッシュにも当てられる。豊かな自然を活かしたアクティビティにも興じることができる。サーフィン、SUPなどのマリンスポーツ。ビーチサッカー、ビーチバレーなどのビーチスポーツ。サイクリング、ランニング、ハイキングといったアウトドアスポーツ。陶芸やガラス細工などの創作体験。野菜や果物の収穫、草刈りなどの農林業体験……。

「東京ディズニーリゾート」ならぬ「鴨川ワーケーションリゾート」と言ってもいいくらいのメニューがある。
あとはそれらを体系的にまとめ、わかりやすく提示するという情報の整理、メニュー化という見せ方が必要ではある。

(4) 遊休施設を民間資本でリバイバル

少子高齢化の進む当地域において、地域課題の一つとして、学校・保育施設などの統廃合で生じる遊休施設の問題がある。
遊休施設は増加の一途をたどり、鴨川市内にも旧保育所・幼稚園、小中学校に至るまで、さまざまな規模の施設が空いたまま、なんの活用もされず眠り、年々劣化していっている。

遊休施設活用の一つのハードルに、再整備にあたる財源がある。
耐震化の問題、また、内外装のリノベーションなど、再活用には多額の資金が必要となる。
そんなこともあり、また、これ、というアイディアもなく、長らく放置されてきている。

しかしながら、都市から地方へ、にわかに強烈なベクトルが向く中で、ワーケーションやサテライト拠点の活用など、都市で営んできた企業のリスクヘッジの一環として、地方に新たな場所を求めるところも多いかと思う。
あるいはそういった場所を新たな場所として生まれ変わらせ、複数の企業でシェアして活用するというビジネスを想起する人たちもいることだろう。

いずれにしても、そういったところに遊休施設を効果的にPRし、活用してもらえれば、鴨川市にとっては、例えば、5年とか10年の固定資産税の減免、土地・建物使用料の減免という投資をするだけで、あとは民間資本が遊休施設をリノベーションし、活き活きとした営みが行われる場所へと生まれ変わらせてくれるかもしれないのだ。そんな千載一遇のチャンスがいま来ていると私は思う。

個人や中小企業レベルで言えば、深刻化する空き家についても同様のことが言えるだろう。
都市の人たちにとっては、我々が二束三文としかとらえていない、そういった“いなかの負の財産”に対して、とんでもないポテンシャル、潜在価値を感じるに違いない。
結果的に、地域は貴重な外貨を獲得することにもなる。

以前、視察で伺った、岩手県紫波町の「オガール紫波」にて、「まちづくりとは“人づくり”ではなく、“不動産価値の向上”にある」というセンセーショナルなフレーズを聞いてびっくりしたが、まさにこれは不動産価値の向上にもつながるとも思う。

(5) ワーケーションは決して一過性の局所的な施策ではない。

ワーケーションという、見方によっては極めて限定的な施策について熱っぽく語ってきたわけだが、人によっては、目指すまちづくりといっても、そんなに視野の狭いところなのか、というように解釈する人もいるかもしれない。

しかし、このワーケーションは決してある特定の分野に関わるものではない。
観光業はもとより、飲食業、農林水産業、商工業、スポーツ・文化など広範な分野にわたる。また、長期滞在においては医療福祉も必須となる。

さらに期待されるのは、ワーケーションの次になにがあるのか、ということだ。
これは言うまでもなく、二地域居住であり、鴨川市もずっと欲している移住・定住の実現である。
したがって、ワーケーションに真剣に取り組むことは、最終的には人口政策という大きなまちづくりにもつながっていくのである。
人口政策はすなわち、みなが目指す「地域活性化」につながる。

地域が活性化されてくれば、さらなる人口増が期待される。
いわゆる「天使のサイクル」という発展の循環を生み出すことができるのだ。

(6) 地域通貨を軸とした、市民必携の地域アプリを!

新型コロナウイルス禍において「インフォデミック」ということばがしばしば聞かれるように、現代社会においてなにごとにも「情報」というものは避けてはならない要素であり、その活用の仕方によって結果は大きく変わる。

「インフォデミック」は情報が悪く作用した場合であるが、鴨川市の生活の利便性を感じてもらう方法として、ハードやインフラの整備ももちろんあるが、もう一つは徹底した情報戦略、情報整備というものが不可欠であると思う。

2008年に創設した「かもナビ」プロジェクトで目指した一つに、鴨川市の情報データベースの構築、さらに市民全員が情報を共有し、地域のことを知る仕組みづくりというものがあったが、残念ながら、現時点においてもその途上であることを今回改めて痛感することになった。

2008年当時と大きく異なるのは、老若男女ほぼ大部分の人たちがスマートフォンというインターネット端末を手にしているということだ。すなわち、市民のほぼ全員がオンラインでつながっているのである。
ということは、そこにあとは効果的なツールを落とし込めれば、地域の情報共有は著しく発展することになる。

そのためにも、ぜひ市民みなが持つ地域アプリをこのタイミングで開発したいところだ。
イベント情報、防災情報、医療福祉情報、子育て情報、生活情報などなど、鴨川市に関する必要な全ての情報を、瞬時にして手にしている全市民に行き渡らせるツールができるだけでも鴨川市の情報環境は先進的なものになる。生活の利便性も格段に上がるだろう。

そうは言っても、仮にこうしたアプリを実現させたとして、市民に普及するのが最も苦労するポイントだ。
やはりある種のインセンティブが必要になる。
そこで取り入れる機能が地域電子通貨機能である。

アプリを入れることで地域で使用できる通貨というインセンティブを手にすることができれば、主婦層からはじまり、またたく間に多くの市民に普及するであろう。
鴨川市で実施されてきた既存の「鯛ポイント」(地域ポイント)や、健康ポイントなども、その地域通貨に統合すれば良い。彼らが抱えていた次の展開への課題もこれで一気に解決されることになる。

地域電子通貨のメリットは地域の中でしっかり消費されるということである。地域の外に価値が流出しないのである。
したがって、かつてあったプレミアム商品券や、今回の特別定額給付金なども、今後は地域電子通貨として付与されるようになれば良いと思う。その付与率も若干高めれば、アプリを入れて、地域通貨を使った方がトクになり、さらなる普及のきっかけにもなる。

健康ポイントの側面からすれば、スポーツや健康づくりの活動を行なったり、参加したらポイントを付与すれば良い。多くの市民がスポーツや健康づくりに取り組み、結果的に、地域の医療費が軽減したり、要介護となる人たちが減るかもしれない。
あるいは選挙の投票について(法令的な問題はクリアする必要はあるが)ポイント加算があれば、投票率の向上にもつながるだろう。

また、かつて考案したことのある「情報特派員」制度はどうだろうか。行政や、このアプリを運営する事務局ではヒューマンリソースに限界はあるし、事細かな情報までは到底集められない。頻繁なアップデートも無理だろう。
ならば「情報特派員」として、例えば、○○○○のお店はオムツ替えの場所がある、とか、多機能トイレがあるとか、そういう細かな情報などを提供してもらい、それに対して返礼ポイントを加える。
こうすることで、情報の細やかさ、新鮮さが担保される。
まさに、市民みんなで作り上げる情報アプリとなる。

このアプリはいわば、市民の地域への貢献を「見える化」し、地域通貨というかたちで返礼する仕組みと言える。

もう語ったらきりがないが、こうしたコンセプト、機能をもつ地域通貨を軸とする地域アプリを実現したいと強く思う。
新型コロナウイルス対策で政府が打ち出した緊急的な交付事業においても実は「地域通貨」ということばもキーワードとして出てきている。いま表明すれば、政府もしっかり補助をして、施策を支援してくれる可能性がある。鴨川市が次なる時代への先駆的なモデルケースともなり得るのである。

(7)“一人勝ち”は目指さない。

こうしたまちづくりで大切なことは、決して“一人勝ち”を目指してはならない、ということである。
他の地域の疲弊は必ず自分たちの地域にも跳ね返ってくる。

鴨川市をモデルケースとして、他の地域にもどんどん真似してもらえば良い。逆に鴨川市も他の地域に良い事例があるなら、どんどん学び、取り込んでいけば良い。

持続可能な地域を実現するためには、ほど良い規模が必要である。
人口過多になってしまっては意味がないのだ。都市の二の舞となる。
我々は大都市を鴨川市に作ろうとしているのではない、一人ひとりが活き活きと輝き息づき、ほど良く社会経済のまわる、心身ともに人間的な人生をまっとうすることのできる、ちょうど良い規模感の地域を作ろうとしているのである。
だから欲張りは禁物である。

もちろん、それは成功してから、の話にはなるが、しかし、そういった心得をもってまちづくりを推進することは大切だと思う。

自分たちだけが良ければ良い、のではなく、他の地域にも良い影響をもたらし、さらに世代を超えて、子の世代、孫の世代、さらにその先の未来に愛する故郷をつなげていくことが「中今」の現代に生きる我々の使命である。

かつて、明治天皇の大嘗祭で卜占により主基田に選ばれた場所である鴨川。もっと遡れば、いまから八百年ほど前に、日本で最も早く初日の出を拝むことのできる清澄山の旭が森で開眼した日蓮聖人。
鴨川に息づく歴史の数々が我々が為すべき使命を教えている。

新しい時代は鴨川から始まる。

(了)


[WALK:1976]
旭が森の日の出
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